雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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東浩紀『動物化するポストモダン』 「第2章 データベース的動物」 5 データベース消費

・個々の作品よりキャラクターの魅力
「萌え」とは80年代に生まれた言葉で、コミック・アニメ・ゲームなどのキャラクター&アイドルに向けられる虚構的な欲望であると一般に言われている。……そうなのか? 誰がそう言ったのか、誰がそう決めたのか。氏自身はどう思っているのか。まあ、どうでもいいけどさ。
エヴァ』の育成ゲームや、『雫』『痕』のパロディ的なトレカゲームと、原作との共通点はキャラクタだけである。……『綾波育成計画』だっけな、あれはまだストーリィとかありそうな感じだが、トレカの方はストーリィが入る隙間がなさそうだ。実際はどうだか知らんが。
 現在において、登場人物の設定を先に作り、痕から物語を含めた作品や企画を展開させる戦略の方が一般的であるらしい。その際、個々の作品の完成度よりもキャラクターの魅力の方が重要であり、それらを高めるためのノウハウも急速に蓄積され、そういった下地の元、今日の萌え要素データベース化はある。
 ここは面白かった。特に戦略の部分。どうしてその場に留まりつづけて、先に進んでない状況なのに、楽しみつづけることができる人がいるのかえらく不思議だったのさ。
・作品を横断するキャラクターの繋がり
エヴァ』の綾波レイがその後のキャラに影響を与えた云々。大きな非物語のところでも思ったが、何で『エヴァ』がキャラ萌えに直結してるんだろう、しかもレイだけ。でじこ萌えとか、初音萌えってーのはまだ分かるが、レイ萌えってのは……どーにも。
・「キャラ萌え」に見る消費の二層構造
 オタクが萌えるのはキャラクタと萌え要素の二つであるため、萌え要素を次々と変えることができる。
・「物語消費」から「データベース消費」
 オタク系文化のバックにあるのは、大きな物語ではなく、データベースである。
デ・ジ・キャラット』を消費することは、単純に作品(小さな物語)を消費することではなく、『デ・ジ・キャラット』全体に共通するストーリィや世界観(大きな物語)を消費することでもなく、『デ・ジ・キャラット』全体に存在するキャラクタや設定(大きな非物語)を消費することでもなく、『デ・ジ・キャラット』という枠にとらわれない、オタク系文化全体に広がるデータベースを消費しているのと同じことである。これを大塚の「物語消費」と対比し、「データベース消費」と呼ぶ。
 なるほどと思った。今までつまらなかったが、ここで溜飲が下がった、納得がいった。
・「アニメ・まんが的リアリズム」小説
 一般的な小説が現実を背景に存在しているとしたら、ライトノベルは虚構を背景としている。そのため現実には不可能であっても、アニメ・まんが的に可能であれば、読者はそれをリアルだと受け止める。その例とした出されたのが、清涼院流水『コズミック』。いや、よりにもよって清涼院かよ。この原稿書いたとき、氏はまだ『不可視なものの世界』に収録された法月綸太郎との対談を行ってなかったのか、それとも別の理由で清涼院を持ってきたのか。まあ、説明を行うのに、楽な方ということで清涼院だったんだろう。
・ミステリの要素も萌え要素
 清涼院の荒唐無稽さが読者に受け入れられるのは、探偵像やトリックや解決法が萌え要素になっているから。これは綾辻行人法月綸太郎に始まる新本格ミステリから受け継がれたもの。ただし、先行世代が意識をミステリの規則(コード)に向けていたのに対し、清涼院の意識は萌え要素データベースに向けられている。90年代ミステリにおけるコードの脱構築問題については、笠井潔『探偵小説論2』が参考になる。清涼院以外で萌え要素を視野に入れている作家は京極夏彦森博嗣。……森博嗣もかよ!


 22ページ分。
 参考文献・参照作品を見ていて思ったが、極端にアニメ・コミックに傾倒している。小説的にはパッと見て、ダニエル・キイス『24人のビリー・ミリガン』、清涼院流水『コズミック』『ジョーカー』『19ボックス』『カーニバル』菜の花こねこ『デ・ジ・キャラット』ぐらいしか見当たらない。
 恣意的だなー。