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東浩紀『動物化するポストモダン』 「第2章 データベース的動物」 6 シミュラークルとデータベース

シミュラークル論の欠点
 第1の疑問に対する解。まず、オタク系文化の表層はシミュラークル(二次創作)に、深層はデータベース(萌え要素リスト)で構成されている。オタクたちは、一見無秩序にシミュラークルを消費しているようだが、そこにデータベースがあることを理解すれば、指向性を持っていることが分かる。
 以降、ベンヤミンボードリヤールからの引用が少々。オリジナルにはオリジナルであるがゆえにある種のパワーを持っているが、コピィはどんなに優れていてもそのパワーがない。今やストックされた記号を組み合わせることでしか、オリジナルを作れない。……ここらへんは、氏がオタク的なシミュラークルとデータベースとの関係を、学問的に語りたいがためにあると思われる。
・オリジナル対コピーからデータベース対シミュラークル
 具体例と今までの言い直しに尽きる。現代のオタクにとって重要なのは、オリジナルやコピーといったものではなく、データベースとそこの入口となるシミュラークルだけ、と。
 またこの項では「作家性の神話」という面白い記述があった。何でも、80年代を代表するコミックやアニメの作家は何人でも挙げることができるが、90年代を代表する作家を挙げるのは難しいということ。これは件のリストを作るときに実感した。リファラを見る限りでは多くの人が「上遠野以前がスカスカ」と言っていたが、自分は全く逆に思っている。上遠野以降がやけに多いのは、そのため。言い方は悪いが、質の悪さは量でカバー、そゆこと。
・二次創作の心理
 言葉をひっかえとっかえしているだけ、今まで同じ。
 ここにも面白い記述が。氏曰く、オタクたちにとって二次創作(シミュラークル)のレベルがいくら氾濫しようと、原作(データベース)のレベルは守られているし、尊重されているという。さらに、シミュラークルが増えれば増えるほど、データベースの価値も高まると言う。この例で言えば、コミケで専用コーナが作られている葉鍵月は二次創作によって高められまくった原作のいい例かもしれない。
村上隆とオタクの齟齬
 これも具体例。今さらになって、この章は「まとめの後の、具体例の提示」だと気付いた。
 村上隆というのは、シミュラークルの異形さを美術作品に昇華させた作家であるという。自分の中では、なんとなく西島大介と同じぐらいに思っていた。
 村上隆による『S・M・P・ko2』連作というのが面白そうだ。少女形態(A形態)→変形過程(B形態)→戦闘機(C形態)と変形する少女戦闘機のフィギュア。手許にある斎藤環著『戦闘美少女の精神分析』の表紙に、このB形態があるが、これだけを見るとセーラームーンとかが変身してる途中に機械を加えてみました、というような感じだ。