圧縮したら、タイトルが誤解を招く表現になりました。正しくは毎年、その年のベストテンを挙げるようになって5年目を迎えた、ボードゲーム好きが選ぶ今年の10作です。
と言うわけで、毎年恒例のベストテンです。2015年は321種類のゲームを、計607回ほど遊び、その中から10作を厳選したことになります。
昨年は総合部門、国産部門、重量級部門、協力ゲーム部門、その他部門の計5部門に分けましたが、今年は、
・総合部門
・国産部門
・中国部門
・海外部門
・その他部門
で分けました。
前置きはこれくらいにして、早速、参りましょう。
総合部門
2015年のベストオブベストは『カルカソンヌ』です!!
賢明なる読者諸氏におかれましては「ちょっと待てよ! 5年間もベストテンを選んでいて、今年は300種類以上のゲームをやったのに、ベストはド定番のカルカソンヌかよ! しかも、2014年のベストもカルカソンヌだったじゃん! 2連続って、どゆことー!!」と思われるかもしれませんが、これには深い深い訳があるのです。
そう、2014年度のベストテンでも、総合部門のベストに『カルカソンヌ』を挙げましたが、この1年間を経て、秋山の中で『カルカソンヌ』の面白さが、まったく、驚くべきことに……これっぽっちも揺るがなかったのです!
元々、定番ゲームの中で『カルカソンヌ』は好きな方でした。とは言え、それは『カタンの開拓者たち』よりも『カルカソンヌ』が好き、でも『チケット・トゥ・ライド』の方が好き、その程度のものでした。これが、がらりと変わったのは、2013年10月末、第7回「ミスボド名古屋」において、おーのさんとチェスクロックを用いて2人で遊んだときのことです。ランダム要素の高い、パーティゲームだと思っていた『カルカソンヌ』が、突如として牙をむいて襲いかかってくるかのような興奮がありました。
「これは面白い!」と息巻いた秋山は、その日からせっせと練習を始め、エッセンで開催される世界選手権に出場すべく、メビウスゲームズさん主催のカルカソンヌ日本選手権に出場すべく、全国で開催される地方予選に足を伸ばしましたが、スランプもあって出場できず、悔しい思いをしました。
まだまだカルカソンヌ熱は引いてないどころか、遊べば遊ぶほど、その奥深さを思い知るばかりなので、多分、2016年もカルカソンヌを遊びまくっていると思います。もし、来年のベストにも『カルカソンヌ』が挙がっていたら、どうぞ、あたたかい目で見守ってください。
ちなみに写真は草津予選のときのもの。カルカソンヌは、今年、53回、プレイレポートを書いていました。1日に複数回、遊んでいるときはまとめているので、実際には100回は遊んでいるはずです。『カルカソンヌ』は遊んだことがあるけれど、2人対戦はやったことがないという方! 是非、遊んでみましょう!!
総合部門の次点は『クリベッジ』、トランプを用いて遊ぶゲームです。
『クリベッジ』は17世紀初頭からイギリスで遊ばれている2人用のゲームです。イギリスのパブでは、よく遊ばれている様子です。また、あまり場所を取らないので、アメリカの潜水艦でも、公式な娯楽として楽しまれている様子です。
お互いにカードを出し合っていって、特殊な役ができたときに点数を獲得し、先に121点に到達したプレイヤが勝者となります。点数は、だいたい2点〜5点の間で得られるので、けっこう小刻みに加点されることになり、点数を覚えておくために「クリベッジボード」と呼ばれる特殊な得点ボードが用いられることが多いです。
このゲームを知ったのは、『カルカソンヌ』の名古屋バネスト予選の打ち上げのことです。メビウスゲームズの能勢さんが大好きなゲームとして教えてくださったのです。帰宅後、早速、赤桐さんの『トランプゲーム大全』でルールを確認して、試しに遊んでみたら、これが、また面白いこと面白いこと。
既にゲームとしては、最適解が解き明かされている様子で「このカードが配られたときは、この2枚を捨てることで、○○%の確率で○○点を得られる」みたいな状態になっているそうです。ただ、囲碁や将棋のように、すべての情報が開示されている完全情報ゲームではなく、『クリベッジ』は運の要素を含んだゲームです。そして、お互いがお互いに最適解を知っているという前提であれば、敢えて、その最適解を崩すことで、つまり、悪手を打つことで、相手を出し抜ける余地があるゲームです。
もちろん、手なりで打っても、そこそこに勝てますが、たとえば負け続けていて、バクチに出ないと挽回できないような場面であれば、ちょっとリスキーな手に出てみたり、色々と幅広い楽しみ方ができるのが、とても良いです。
最近はトランプのコレクションに加えて、クリベッジボードも集めようかなと思っていますが、やはりトランプと比較するとボードは、どうしても高いですし、空間を食うので、二の足を踏んでいます。
国産部門
国産部門のベストは、新ボードゲーム党さんの2014年の作品『タイムボム』です。
これは、傑作ですよ。
秋山はF国から人狼を始めたので、かれこれ10年以上にわたって人狼を楽しんでいますが、ここに来て、正体隠蔽系ゲームの新しい地平が現れたと感じました。
元々、人狼は瑕疵の多いゲームで、その瑕疵も含めて楽しむところがありますが、たとえば脱落要素であったり、不平等性を排除した『レジスタンス:アヴァロン』に触れて「人狼は、ついに、ここまで来たのか」と感心すると同時に「これは、言わば人狼2.0だな」と思ったりしていました。その前後にも、多くの人狼アレンジを遊びましたし、正体隠蔽系を遊びましたが、やはり人狼の基礎になっている感、そしてアヴァロンの正当進化感は崩れませんでした。
それが、今年の3月のことです。栄のいば昇で、けがわさんとひつまぶしを食べているとき『タイムボム』のルールを教えていただき、心臓が沸騰するかと思いました。いやはや、すごいことを考えたひともいたものです。ルールを聞くだけで傑作であることが分かり、その夜に実際に遊んでみて、傑作であることを確信しました。言うなれば人狼3.0ですよ、人狼、アヴァロンと来た系譜の最先端にあります。ちょっと、すごいデザインです。
正体隠蔽系は、国内では好まないプレイヤが多いので、無理にとは言いませんが、一度は遊んでいただきたいゲームです。度肝を抜かれますよ。
国産部門の次点は『ごいた』です。
『ごいた』は2013年度のベストテンにも挙げましたが、その当時は、運の要素が高くて、気軽に何度も遊べる中毒性の高いゲームみたいな位置づけだったと思います。今は、違います。
2015年4月に名古屋ごいた会を開催し、神奈川から、いらっしゃったよち犬さんと深夜までごいたを遊んだのですが、その深い考えに痺れました。ごいた……全然、運ゲーではないですね。むしろ、これを運ゲーだと称するのは、失礼に値すると感じました。今年は、機会を見て、石川の能登に足を伸ばして、歴戦の猛者たちと、ごいたに興じたいものですね。
好みの傾向で言えば、『クリベッジ』に近い感じですね。パターン数が多いので、『クリベッジ』ほど解明されておらず、状況に応じて、好みの分かれる指し手があるかと思いますが、そういうのを考えるだけで楽しいです。
中国部門
中国部門……! また、すごい部門が出てきたと我ながら思います。好きなボードゲームベストテンという企画をやっている方は、秋山以外にも何人かいらっしゃいますが、部門で分けたときに中国部門が入ってくるのは他にないのではないでしょうか。
と言うわけで、中国部門のベストは『天九』です。
よち犬さんが『ごいた』を遊びやすくした『ごい牌』が良かったので、『天九』を遊びやすくした『天九リメイク』を遊んでみたところ、ころっと参ってしまったというのが背景にあります。
『天九』とは、その名の通り天九牌と呼ばれる、ドミノタイルに似た牌で遊ぶゲームです。天九牌は、北宋時代(1100年代)にはあったと言われており、『牌九』、『長天』、『逐鹿中原』などのゲームを遊ぶことができます。そんな天九牌を使って遊ぶ『天九』(もしくは『打天九』)はメイフォローのトリックテイキングで、4人専用のゲームです。
時代柄、点数計算が、かなりざっくりしていて、役が決まれば、凄まじい倍率でチップを得られますが、平均して勝つには、しっかりと戦術を理解している必要があり、また戦術を知っている者同士の読み合いもあつく、前述の『ごいた』と同じような「深さ」があると感じました。
中国部門の次点は『シャンチー(象棋)麻雀』です。
これもまた知らないひとは「またぞろ変なものが出てきたぞ……」と思われるかもしれません。
古代インドで生まれたボードゲーム『チャトランガ』は、東西に広まり、東においては将棋、西においてはチェスに変化したと言われていますが、『シャンチー』も『チャトランガ』の流れを汲んだゲームのひとつです。2人のプレイヤが向い合って、盤上に置かれた将、象、馬、車、兵などの駒を使って、相手の将を倒します。
『シャンチー麻雀』は、この『シャンチー』の駒を使って麻雀的なゲームを遊んでしまおうというもので、主に3人から5人で遊ぶことができるゲームです。麻雀と同じく、チーやポンと鳴くことができ、手の中で役が出来たらツモとなり、他プレイヤが河に捨てた牌で上がれそうなロンと言う、まあ、麻雀をシンプライズしたゲームです。
「だったら、麻雀でいいじゃん」と言われそうですが、このシンプライズ感が、とても良いんですよね。『シャンチー麻雀』にも色々あって、32枚版、56枚版、64枚版がありますが、やっぱり32版が、最もシンプルで、最もスピード感があって好みです。
海外部門
ここまで変なゲームばかり取り上げていて、ユーロ感がまったくないので、ちょっと歩み寄ろうと思います。と言うわけで、海外部門です。
海外部門のベストは『ザ・ゲーム』です。
『ザ・ゲーム』は2から99までの数字が書かれたカードを使う、協力系のゲームで、ドイツ年間ゲーム大賞のノミネート作です。プレイヤ同士が結託して、すべてのカードを出しきることを目的とするゲームですが、まったくどうして今まで誰も思いつかなかったのかがふしぎなくらい、シンプルでありながら奥深いゲームです。
系統としては、ボザの『花火』に近しいところがありますね。秋山は2013年度のベストに『花火』を挙げましたが、これに劣るとも勝らない名作であると感じました。機会に恵まれず、未だ拡張を遊べていないのですが、何度だって遊びたい傑作です。
海外部門の次点は『テラミスティカ』です。
いわゆる『アグリコラ』等と同じく、繰り返す遊ぶことによって魅力を見出していく系統のゲームです。初プレイは2013年2月、そのときはピンと来ませんでしたが、2015年2月に水池くんが仕事で名古屋に来ることがあって、そのときにプリニークラブで遊んだのですが、妙に面白かったのです。
この頃は、近所に住んでいるフレイさんとカヴェ研究と称し『カヴェルナ』を延々と遊び続けていたのですが、その後に着手したテラミ研究は、ほんとうに楽しかったです。なんですかね、基本となる戦術をベースに、選択した種族と、他プレイヤの種族と、盤面の状況等、色々なことを見つつ進めていく感じが、多分、性格にあったのだと思います。
『アグリコラ』、『ル・アーブル』、『カヴェルナ』と『テラミスティカ』があったら、『テラミスティカ』を遊びたいですね。あ、でも『洛陽の門にて』があったら、そっちかな。
ちなみに写真は蹂躙という言葉を体現したところ。こういうプレイをしちゃ駄目ですよ。
ま、海外部門に関しては、こんなところでいいでしょう。
その他
『クイズ』です!
「ボードゲームじゃなくね!?」と指摘を受けそうですが、写真をご覧ください。ちゃんとボードがあります。なんて詭弁はさておき、クイズはクイズで楽しいのに、ボードゲームとは考えにくいからベストテンに入れないと言うのは、楽しいに対する侮辱だと思ったので、入れることにしました。
いわゆる早押しクイズです。
出題者が問題を読み始めて、答えられると思ったらボタンを押して、回答する。
出題者が問題を読み始めて、答えられると思ったらボタンを押して、回答する。
やることは、これだけです。これの繰り返しです。
イージー。
とても、イージー。
でも、やってみると、ぜんぜんボタンが押せないのです。
回答が分からない質問に対しては、当然、ボタンを押せないですし、回答が分かった質問に対しても、ボタンを押すのが遅れると、回答することができません。
特に後者が悔しいです。
そして、早押しできて回答できると気持ちいいです。
フィボナッチ数列。
秋山の成功体験はこれですね。
レンさん「いち、いち、」
ピンポーン!!
(秋山とまるだるまさんが、ほぼ同時にボタンを押す)
(ランプが点灯しているのは秋山)
秋山「フィボナッチ数列!!」
レンさん「正解!」
このときの「よっしゃあ!」という喜びは今でも覚えています。
ただ、クイズはやっぱり知識が問われますね。ベタ問を記憶するのにも限界がありますし、テレビを見ないし、新聞も読まないので一般常識に欠ける秋山は、その手の質問にからっきしです。好きな小説やミステリに関する質問であっても、固有名詞を覚えていないので「なんとなく分かるけれど、正確には答えられない」これが、とても悔しいんですよねえ。
でも、クイズの楽しみは回答すること、それだけではありませんでした。
問読み、そして何よりも質問の自作。
これですよ……。
得意とするミステリやライトノベル、グランブルーファンタジーの早押し問題を作って、知り合いに答えてもらう。また、回答者を見ながら、回答者によって答えられそうな質問を、敢えて向けて場を調整したりしなかったりする。
こういう、言わばTRPGにおけるゲームマスターの感じ*1が、とても性に合います。
と言うわけで、みんなクイズやりましょう。そして、このエントリを読んで、クイズの自作に関心を持った方は、秋山が回答できそうな質問を用意した上で、秋山を誘ってください!
その他部門の次点にして最後は『光より遅く』です。
これは2015年の上半期を席巻したと言っても過言ではないゲーム……ではなく、ポエム、です。クイズの時点でボードゲームから離れてる感がありましたが、とうとうゲームですらなくなりましたね。
『光より遅く』、原題はSlower than light。Marc Majcherによるロールプレイングポエムで、言ってみればプレイヤ同士が仲良くなるためのツールです。とても仲の良いという設定の3人から5人が、ある日、何かをきっかけに離れることになってしまい、でも彼らは、とても仲良しだったので、完全に離れきってしまう前に手紙を交換するという、まあ、言ってみればお便り交換ゲームです。
特徴的なのは、設定的にお互いの距離が離れることで、手紙を送ってから相手の手元に届くまでの時間が、どんどん長くなることです。最終的にお互いは、もう二度と会えないほどに離れきってしまい、最後の手紙は、その場で開封することができず、自宅に持ち帰って、ひとりになって読むことになります。
なんという切なさでしょうか。
出会いと別れ、すれ違い想いと感情、そして故郷に戻り、みんなで仲良く遊ぶ日は二度と訪れないのだという哀愁。素晴らしい体験を得られます。今でも一連の手紙は、箱にしまって取っておいてあります。夢中になって遊んだ日のことを、忘れることはないでしょう。