雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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キーパー不在の港町でひとり探索者する『シンキングシティ』の感想(第1回)

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 クトゥルフ要素のあるホラーADV『シンキングシティ』を遊び始めました。
 セールでSwitchのダウンロード版が安かったので購入したのですが、妙にやめられなくて続けています。まだ第2章に相当する「海底の藻屑と消える」をクリアしたところですが、面白いので紹介させてください。ネタバレには配慮しています。

ゲームの概要

 まずは、ポイントを列記していこうと思います。
 世界観としては、USAの東海岸にあるオークモントという、地図に載っていない架空の街が舞台となります。これは小説家ラヴクラフトの代表作のひとつ『インスマウスの影(インスマウスを覆う影)』に登場する、ずばり港町インスマウスがモチーフとなっているのでしょう

 プレイヤーがコントロールする主人公は、かつてボストンで探偵業を営んでいた男。おそらくは軍人時代のトラウマが原因で、時おりひどい幻覚にさいなまれます。
 ゲームとしては、どこまでも地続きで自由に移動できるオープンワールドで、ミッションを受注し、街を探索し、事件を解決し、報酬を得る。という流れです。
 私の感性ですと、主人公のハードボイルド感も相まって《探偵 神宮寺三郎》シリーズに近い印象です。あちらはボタンひとつで、どこにでも瞬時に移動できますが、こちらは実際に街を歩く必要がありますが……。

特殊能力を活かした探偵ADV

 ゲームとして面白いなと感じたのは、主人公の幻覚に困っているという設定が、過去視やサイコメトリー(残留思念の読み取り)として活用できることです。
 彼は、事件現場において、残された遺留品や証拠を探索するのではなく、心の眼を開いて、その場で起こった出来事や、犯人の逃走経路をリアルに知ることができるのです
「ちょっと、ずるいのでは?」と思わないでもないですが、心の眼を使っている間は、SAN値に相当する精神力が、じわじわ減るというデメリットもあるので、まあ、置いておきましょう。いずれも、主人公は、この超自然的な能力を駆使することで、地元警察が手をこまねいている難事件をも解決し、新参者でありながら一定の評価を得ることに成功するわけです。

遊び始めは苦痛でした

 書き忘れていましたが、舞台となるオークモントは少し前に洪水に襲われており、街の3分の1くらいは水没し、ヴェネツィアのようになっています。また、洪水以後に怪異が発生するようになっただとか、何よりの変化は街中の至るところに、得体のしれない謎めいた汚物が残っていることです。
 これが、えらくグロテスクで、プレイしはじめた当初は、ずっと「気持ち悪いなあ、気持ち悪い」とブツブツ言いながら遊びました
 また、心の眼を使いすぎたり、死体や異形なるものを見すぎると、精神力がゴリゴリ削られ、それによって主人公の幻覚が現れ、画面がぐにゃっぐにゃになり、プレイヤーはひたすら焦燥感を覚えます
 まれに発生するバトルも、アクションゲームに慣れているプレイヤーであれば、難なく撃退可能かもしれませんが、毎回、ひいひい言いながら対処しています。
 と言うわけで、第1章に相当する「冷ややかな歓迎」を半分ほど遊んだ時点で、内心「面白いは面白いけれど、あんまり自分向きではないな。クリア前に放り投げることになりそう」と予感しました
 しかし……!

根源的な魅力は主人公の性格と選択

 実際には「冷ややかな歓迎」をクリアし、その後の「海底の藻屑と消える」もがんばってクリアしてしまいました。
 確かに、ミステリー好きなので、現場を捜査し、証拠品を集めて、推理して、事件を解明する。この一連の流れに魅力を覚えないでもありません。
 でも、自分自身がプレイングをやめられない、ほんとうの理由としては、主人公の魅力に他ならないのではと感じました
 なんて言うか、等身大、なんですよね。
 妙に格好つけているわけでもなく、幻覚に困っているからなんとかしたいという根っこがあって、その上に報酬が貰えるなら依頼は請け負うという探偵気質や、いろいろあってちょっと暗いけれどジョークは言うし陽気なところもあるというアメリカ人的な性格が見え隠れします。
 何よりも、選択肢が自由に選べることですね!
 たとえばギャングに追われている容疑者がいて、捜査の結果、その容疑者を発見したとします。そして、容疑者と対話して身の上話を聞いたうえで「よし、この容疑者を逃してやろう」と思ったならば、ギャングに対しては「容疑者は既に死んでいたよ」と嘘をついて、依頼を完了させることができるのです。
 プレイヤー自身が物語の行く末を決めて、自分だけの物語を作り上げる。この体験が、とても好ましいですね

クトゥルフ要素は人それぞれ

 確かに魚人顔のインスマウス族や、いあいあ! 的なフレーズは頻出しますが、クトゥルフ知識ゼロでも楽しめるのでは……? という印象を受けました。
 そもそも、私自身の感覚としては、クトゥルフ的フレーズが出るから恐怖を覚えるのではなく、全体的な雰囲気やおどろおどろしさに恐怖を覚えるので、直截的なフレーズがあろうがなかろうが関係ないんですよね。
 そういう観点では、この『シンキングシティ』は街中に残された汚物や、廃墟に残された打ち捨てられた家具、現場に立ち尽くす発狂した目撃者によって、十分に雰囲気が演出されていて、それで満足です

終わりに

 ちょっと攻略サイトを見てしまいましたが、全10章くらいみたいですね。
 後半に行けば行くほど難易度も上がるでしょうし、ストーリーも伸びそうでしょうから、単純にゲームの20%が終わったとは言えないでしょうが、まあ、少しずつ進めて、無事にクリアできたら、また感想を書くことにします。