えってぃさんのマーダーミステリー『0時の警鐘』を遊びました。
ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。
ゲームの概要
GMレスで遊べる4人用マーダーミステリーです。
BOOTHで販売されており、オフラインはもちろんオンラインでも遊ぶことが可能です。
ストーリー
とある田舎の病院で様態の悪化した患者がいた。人工呼吸器を取り付け一命はとりとめたものの、わずか数時間後、呼吸器のマスクが外れた状態で患者が発見された。
https://booth.pm/ja/items/1971970
救命にあたった「研修医」「新人看護師」「臨床工学技士」は自身の名誉と職をかけて。お見舞いに来ていた「家族」はその原因を追究すべく、4名が話し合いを始める。
プレイヤーは病院関係者もしくは患者の家族を演じ、人工呼吸器のマスクが外れるという事件の真相を突き止めるべく議論を交わすことになります。
ゲームの感想
初心者にオススメしやすいシナリオです。
まず、プレイ時間が短いのが魅力です。議論時間は25分。事前説明やシナリオの読み込み時間、エンディングの読み上げを含めても1時間です。気軽に誘いやすい重さですし、ちょうどよい分量です。
各キャラクターの設定が、希薄に作られているという点も、デザインとして秀逸だなと感じました。
多くのマーダーミステリーでは、たとえばスミスですとか、田中さんですとか、名前がつけられていることがほとんどです。そして、その人物の生まれや育ち、現在に至るまでのエピソードが書かれています。
しかし、この作品の場合、キャラクターは役職名で統一されており、言ってみればキャラクターはプレイヤー自身なのです。従ってゲーム中は、役職名もしくはプレイヤー自身の名前で呼び合うことになります。
このシナリオで気づいたのですが、世界観への没入度が重要なポイントとなる中量級以上のマーダーミステリーと異なり、軽量級シナリオの場合、キャラクターの設定は不要かもしれません。
キャラクターとプレイヤーの性別の一致不一致を気にする必要もありませんし、ゲームが始まった直後の「あ、どうも。○○という名前で、○○をやってます」といった自己紹介タイムも割愛できます。
そして、何よりも私が良いなと思ったのは制作コンセプトです。
エンディング後に読むことができるコメントに、このマーダーミステリーをどういったコンセプトで作ったのかという点が気に入りました。
マーダーミステリーは、作り手にとって難しいジャンルで、一般的な創作作品における「書き手は書いたもので勝負して、言い訳しない」が効果的でないときがあります。
確かに遊んだ後に、全キャラクターのシートを熟読すれば、作者の狙いは明瞭になるでしょうし、ゲームの仕掛けや面白味も浮き彫りになります。
しかし、実際に、そんなことはできません。だからこそ公演の場合、GMはプレイ後に「この物語がどういった構造だったか説明しましょう」となるし、パッケージ作品の場合、プレイヤーが知りたいと思っているであろうことがまとめられていたりします。
そして、この作品の場合、さらに一歩進んで、何故そのようにしたのかというコンセプトの説明まで用意されているのです。
とても納得感があります。
そして、マーダーミステリーにとって、非常に重要なポイント。それは納得感です。どんなに不自然なトリック、共感できないストーリーだったとしても、納得が得られれば、すべて丸く収まります。
逆に、どんなに美しい物語であったとしても、1点でも納得できないポイントが残ってしまうと、しっくり来ないまま終わってしまい、満足感が下がってしまいます。
終わりに
途中から『0時の警鐘』に関する感想というより、マーダーミステリー論みたいになってしまいましたが、とても良い作品でした。