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演劇作家が改変した言語ゲームイベント『「クソゲー化拡張パック」で『想像と言葉』をPLAY』の感想(ネタバレあり)

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 2月11日から2月20日にかけて開催中の、大岩雄典さんと米光一成さんによる2人展+放送『人数・時間・対象年齢』。
 その5日目に開催された企画『「クソゲー化拡張パック」で『想像と言葉』をPLAY』に参加させていただきました。けっこう新鮮だったので、記憶が薄れないうちに感想を書きます。
 ネタバレしているので気になる方は、回れ右推奨です。

ネタバレあり、とは?

 体験要素が強いゲームイベントだったと考えており、内容や展開を知っている状態で参加するのと、知らない状態で参加するのとでは、体験に差異が出てきます。
 今後、再演されるのかどうかまったく分かりませんが、念の為、ネタバレありの注意をさせていただいた次第です。

イベントの概要

 米光一成さんと神谷聡子さんの共作である『想像と言葉』に、詩人・演劇作家の谷竜一さんが考案した「クソゲー化拡張パック」をインストールして遊ぼうという会です
 元のゲームがどのように変異するのか、どういう化学変化が生まれるのかを楽しむ会と言えます。
 全体を俯瞰したとき、第1部~第3部に別けられるなと感じたので、個別に感想を書きます。

第1部:匿名

 第1部においては、9人のプレイヤーが名前を「00001」から「00009」にし、カメラをOFFにした状態、つまり匿名状態で遊びました
 GMが一方的にルールの説明、議事進行を行い、プレイヤーは回答を名前欄に入れることでしか意思表示ができませんでした。
 他プレイヤーの意見では不自由さが際立ったり、回答時間が短すぎた様子でしたが、わたしは『想像と言葉』を遊ぶのが、この日が初めてだったので「こういうものか」と素直に捉えました。
 また、匿名の状態だと回答に責任を持つ必要性がないことに気が付きました。
 通常、この手のワードゲームですと、パッと言葉を思いついても、それが公序良俗に反するものだと違う言葉を考えます。けれど、匿名化においてはリスクがないので発信できてしまいます。2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)において発言が激化する理由を、まさに体験したなと感じました。
 何をどのように進めるかも知らされていなかったので、第1部は全体的に不安と緊張がないまぜになった時間で、ドキドキそわそわしながら過ごしました。

第2部:ロールプレイ拡張

 第2部においてはマイク機能とカメラ機能が解禁され、プレイヤーは自由にコミュニケーションできるようになります。しかし、各プレイヤーには事前にロールプレイ拡張に関する指示とキャラクターシートが配布されており、キャラ設定に従ってプレイするよう指示を受けていました。
 わたしは地方都市で町会議員をやっている政治家のロールだったので、それっぽいバーチャル背景を用意し、それっぽい口調で話しました。
 このルールの真価は回答内容がロールに左右されることです
 あるお題が提示されたとき、わたしが真っ先に思い浮かんだのは「カービィ」だったのですが「政治家はカービィなんて知らない」と考え、仕方なく「メタバース」と答えました。
 第1部においてはコミュニケーションが制限されつつも、回答それ自体は無責任に自由に書けました
 一方、第2部ではコミュニケーションは解禁されているのに、回答内容はロールの制限を強く受けて不自由になります
 この落差は斬新で、体験感が強く出ているように感じました。
 冒頭にネタバレありと記載したのは、この部分の体験が「展開を知っているかどうか」でおおきく変わると考えたからです。

第3部:フェアリー

 ロールが解除されてからは、いわゆるボードゲーム用語で言うところのフェアリー、変則ルールを入れ替え付け替え楽しみましょうのコーナーでした。
 第1部と第2部において支配している、と私が感じていた場の強制感がなくなり緊張が解けました。人間、緊張状態で過ごせる時間には限りがあるので、これくらいがいいかもしれませんね。
 仲良しメンバーが好きなゲームのルールを変えて遊ぶのはよくあることですし、デザイナーが自分のゲームをリリースする前に、ちょっとずつルールを変えてテストプレイすることもよくあることなので、それと同じような姿勢で楽しみました。肩の力が抜けてよかったですね。


 答えを俳句にする拡張は、俳句+三題噺みたいな感じで好みでした。私が作ったのは、以下のふたつ。
駆けてゆく宇宙の彼方にライカ犬
星月夜立ち去る影が伸びてゆく

終わりに

 イベントがはじまる前に、演出の谷竜一さんと補佐の岸井大輔さんが、Zoomを見て立ち並ぶ00001から00009までの物言わぬアイコンを見て「ゼーレのようだ」と漏らし、そこから演劇について言及していたのが印象的でした。
 プレイの風景はYouTubeで配信されていたので、集まった9人はプレイヤーであり、観客であると同時に、インプロ(即興演劇)の役者でもあります。また、幕が上がった直後は、没個性的で、まったく差がありませんが、カメラがONになった後はキャラクターになります。
『人数・時間・対象年齢』のテーマ「物語に参加させる」を体験させるイベントとして第1部から第2部への流れは秀逸でしたし、追求の余地がありますし、第1部と第2部だけを切り出してイベント化できそうであると感じました。今後の展開に期待したいですね。