Nintendo Switchのゲーム『Unpacking アンパッキング』を遊びました。
1人用のある種のパズルゲームです。
ゲームの概要
プレイヤーは引っ越しのダンボールを開梱し、荷物を整理して、室内に飾ったり、収納に仕舞っていったりします。
ゲームとしての行動はパズルですが、行為としては、いわゆる片付けに相当します。
ゲームの感想
遊びはじめる前は、大人の塗り絵を想像していました。
無心になって遊ぶことができると言うか、余計なことは考えず、黙々と没頭すること、それ自体を楽しむゲームかと思いました。
遊びはじめて、すぐに「違うな!」と気づきました。
もちろん、黙々と片付けに没頭する楽しさや、雑多な物を整理整頓して、収納に収まりきるように仕舞い込んでいく快感はあります。
しかし、それ以上に楽しいのが読み解き、そして気づき、です。
プレイヤーが片付けることになるのは、すべてあるひとりの持ち物です。
その人物の幼少期から成長し、大人の階段を登り、自分の人生を歩いていく様子を、開梱そして荷物の整理という行為を通して見守るのです。
環境ストーリーテリングという言葉があります。
ゲームにおける物語表現の技法のひとつで、長々とした文章で物語を説明するのではなく、環境全体に断片的に物語のかけらを配置しておいて、それを拾い集めることで、プレイヤーに物語を受け取らせます。
本作で行われているのも、まさしく環境ストーリーテリングです。
ひとつのダンボールから出てくるものが、寝室に置くべきものだったり、浴室に置くべきものだったり、台所に置くべきものだったり……きっと、大急ぎで、逃げるように荷造りをしたんだろうなと想像できます。
いつものヌイグルミが箱から出てきたとき、深い安堵感がありますし、最初の頃は、必ずあった人形が、いつの間にかなくなっていることに気づいたとき、言いようのない喪失感を覚えます。
見覚えのないタオルであっても、その色を見て「ああ、この色、好きだものね」と親近感を覚えますし、目に見える場所ではなく見えない場所に置くように指示されたとき、捨てられないけれど視界に入れたくないものってあるよねと思わず深く頷きます。
終わりに
時間経過する中、開梱と片付けという行為を通して、あるひとりの人物の一生を追体験する。
作中にセリフはまったくありませんが、物語要素に溢れた、ナラティブなゲームでした。傑作、ではないでしょうか。