雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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前半と後半とで全く異なるゲームを遊ぶ『ファイユーム』の感想

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 ドイツのボードゲームデザイナーの中で、最も好きなのはフリーゼです。
 ボードゲームマニアで、時代の潮流を見つつ、流行りのメカニクスを貪欲に取り入れ、魔改造していくスタイルが好きです。
 そんな彼の久々の王道作品『ファイユーム』が面白かったので感想を書きます。

はじめに

 フリーゼの代表作と言えば『電力会社』で間違いないでしょう
 次点は『ファウナ』かなと思いますが、BGGを見ると『ロビンソン漂流記』や『フルーツジュース』も人気です。
『ロビンソン漂流記』は優れた1人用ゲームなので分からなくもないですが、『フルーツジュース』は実験作の部類だと捉えていたので、すこし意外です……。
 と、前置きは、これくらいにしておいて、本日紹介する『ファイユーム』は自身の『電力会社』や人気作『コンコルディア』の特徴を組みつつ、変則的なデッキ構築や線路敷設などのメカニクスが高い次元で融合した、意欲作でありながら手堅くまとまった作品です
 フリーゼ自身も「最近、実験作ばかりだから、たまにはちゃんとした作品を作らないとまずいかも」と思ったのかもしれません。

ゲームの概要

 プレイヤーは、エジプトのファラオから使命を受けた参謀として、湿地帯であるファイユーム地方の発展を目指します。
 ゲーム終了時、最もファイユームの発展に貢献したプレイヤーが勝利します。

ゲームの感想

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 タイトルにもなっているファイユームは、エジプトにおけるある地域の名前で、ゲーム開始時においては湿地帯となっており、全域にワニが棲息しています。
 各プレイヤーは協力して農夫を送り込み、ワニを駆逐していきます。
 ある程度、ワニがいなくなったら、今度は集落を立てたり、集落同士を道で結んだり、工場を建てたり、集落を街に進化させていきます。
 ゲーム終盤には、すっかり変貌したファイユームにおいて祭りを開催したり、モニュメントを建てたりして、勝利点を稼いでいきます。
 公称2時間のゲームですが、ゲームの前半と後半では、やっていることが全く異なっています。たとえば序盤で大活躍する農夫は、中盤に差し掛かる頃には姿を消しています


 電車ゲームや株ゲームのように、ゲームボード上に配置されたコマが、共有財産になるのが面白いポイントのひとつでしょう。他プレイヤーが建てた工場に、労働者を送り込んで稼働させるなど相乗りが可能です。
 相乗りを恐れるがあまり、工場を建てないという選択は、あまり得策とは言えません。
 チマチマと農夫を送り込んでいるとジリ貧に陥るからです。
 ゲーム全体を俯瞰して、ファイユーム地方がどの方向に進化するのかを見定めながら、最適なカードを購入していく必要があります


 60枚以上あるカードの出品も面白く、振られている番号に応じて店頭に並びます。
 より番号が若ければ店頭に並びやすいですし、おおきい番号だと見えてはいても、ゲーム終盤にならないと落ちてきません。
 中には、完全に上位互換となるカードもあり、そういったカードを首尾よく序盤に獲得できるとアドバンテージになります。
 かと言って、たとえば工場がひとつもない序盤に、工場に労働者を送り込むカードを購入しても、無用の長物以外の何物でもないので、改めて書きますが状況を見つつ、購入するカードを決める必要性があります


 変則的なデッキ構築と書きましたが、このゲーム、一度、使ったカードは捨て山に重ねていき、ドローを選択したタイミングで捨て山の上から手札に戻していきます
 ドローできるカード枚数は、捨て山の上から3枚だけ。もっと回収したい場合は、お金を払う必要があります
 序盤に大活躍する農夫ですが、中盤以降、その価値は薄れていきます。
 タイミングを見計らって、捨て山の底に埋めるように工夫しないと、いつまでも手札に残ってしまい邪魔になります。
 極めて強力なカードを購入できたとして、すぐに利用してしまうと捨て山に埋もれてしまい、拾いにくくなります。せっかく買ったのに、実際に使うのは少し先、そんなことも多いです。
 いかに手札と捨て山の状況をコントロールして、自動的に圧縮されていくデッキを制御するか。プレイヤーとしての技量が試されます


 2人、3人、5人で計3回、遊びましたが、毎回、展開が異なるのが面白いです。
 たとえば街を建築するカードが、あまりに序盤に出てしまい、全プレイヤーがスルーした結果、流れてしまうと、そのゲームではファイユーム地方に街が登場しないことになります。
 そうなると「街の数だけ得点を獲得する」みたいなカードは、完全に無価値となります。
 プレイヤーの性格、カードの出方、その順番、そのときの盤面の状況。
 ゲームの展開は劇的に変わるので、繰り返しのプレイに耐えられる作品です。
 最初は、すこし取っつきにくいかもしれませんが、フリーゼの次の代表作になるかもしれない作品、ぜひ遊んでみてください。

終わりに

 このゲームの真価が発揮されるのは、拡張が発売された後かもしれません。
 途中でカードが60枚以上あると書きましたが、基本セットに含まれるすべてのカードは偶数番号で、後に奇数番号を含む拡張がリリースされることを予感させます。
 新たなカードが加わったとき、ゲームがどのように変貌するのか、いまから楽しみです。