雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

1-01-01から1年間の記事一覧

SET THE BOOK ON FIRE

ありとあらゆる書物の後書きを集めた後書き集を作ったならば「後書きに何を書けばいいか判らない」という作者のぼやきがあるものは、かなりの数に上るだろう。そう、後書きに何を書いていいか判らないあまり、その作者は後書きで自らの弱点を晒し、弱音を吐…

ANY WHERE

かつて、何処でもない何処かへと旅した旅人がいた。旅人は誰も知らない何処かを求め旅を続けていたが、旅人が訪れる何処かは、どれも誰かが知っている何処かであった。 ある時、旅人は誰もが知る何処かへと漂着した。旅人はそこで今まで誰も知らなかった音色…

THE MOON ON THE WATER

もし……世界が反転したら? 他の皆が地球に立っていられるのに対し、自分だけが逆らいたくもないのに重力に逆らって上下さかさまに立ってしまったとしたら? 気がついたとき、私は吊り橋の下にいた。見上げれば穏やかな水面、私が立っているのは山なりにカー…

UNDER GROUND

この都市はあまりに多くのものを、皮膚の下に隠している。 雨の痕が汚らしく残ったコンクリートの道路。その両脇を固めているのは、真っ白なペンキがまぶしい洒落たブティックやコーヒーショップ。きれいな振りをしているけれど、ペンキの下にはどす黒い陰謀…

RIGHT HANDED

コーヒーに垂らしたミルクをスプーンで掻 書くことは、果たして攪拌と言うのだろうき をは判らないけれど。コーヒーがいい具か混 前か砂糖を入れわすれた。カップをお合。ぜ 名う、こに隠れていたのだね。改め皿にしな の違ばこる。充分に溶けきったとてに冷…

WALK ALONE

一郎は次郎の頭に灰皿を振り落とした。その光景を、メアリは見ていた。 「メアリは勘違いをしない」館の主は、厳かに言った。「メアリは人間にしか見えないが、人間ではない。機械だ。先だって私がメアリに居間に残っている人数を訊ねたときのことを覚えてい…

BATTLE#4

「ようこそ。世界の屋上、忘却の彼方、仇討の戦場へ」 「時の君……」 ふたりの人物が相対していた。しかし、そのふたりは、ふたり共、「人物」と形容するのが果たして正しいのかどうか、その判断に困るぐらいに「人物」らしくなかった。双方ともに一瞬ごとに…

SKY WALKER

「不思議だ」「謎だねえ」「不可解だ」「理由が判らないのよね」「意味深だ」「なんでだろうねえ」 休日、犬の散歩をしていたら学校の友人二名と鉢合わせた。 「なにやってるの、ふたりとも」「ん……ああ、あの家なんだが、ちょっと見てくれよ」「あそこに扉…

SAMURAI DRIVE

刀を鞘から抜いたその瞬間から、躰を包む生温かい酩酊感。 視界の隅を緋い花が舞い散り、そこが戦場であると錯覚する臨場感。 この魔剣を使いこなせるのは、この世で自分しかいないのだという責任感。 失敗すれば、誰よりも先に己が血が吸われるという危機感…

HIMA

暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇 暇 暇 暇 暇 暇 暇暇暇 暇 暇暇暇 暇暇暇暇暇暇 暇 暇 暇暇暇 暇 暇暇暇 暇暇暇暇暇暇 暇 暇 暇暇暇 暇 暇暇暇 暇暇暇暇暇暇 暇 暇 暇暇暇 暇 暇暇暇 暇暇暇暇暇暇 暇 暇 暇暇暇 暇 暇 暇 暇 暇 暇暇暇暇暇暇暇暇…

A BLAST OF WIND

少女の名前は風。 遠い昔、旅人に名付けられて以来、少女はただの空気という存在なきものでありながら、名前を持つ存在になっていた。少女はその、風に吹かれれば飛んでしまうような、淡い理性で考える。自分自身のことや、眼下の大地のことや、そこに暮らす…

THE STARRY EXPANSE OF THE SKY

酔いを醒まそうと熱気に満ちたパーティ会場からテラスに出てみれば、先客がいた。頬を朱に染めて、星空を眺めているのはうら若い貴婦人だ。 「こんばんわ。失礼でなければ、ご一緒してもよろしいかな」 私の気配に気づかなかったのは、貴婦人は驚いたように…

WHO WITCH

欧州において森とは、奥深く、薄暗く、入れば迷う、魔界のような空間として認知されている。魔女は森の中に住み、森の中には地獄への抜け道があり、一寸先の見えない人生は森に喩えられている。 その森にひとりの老人が住みだした。 老人は魔法使いを自称し…

THE BRINK OF TIME

転がる死体を前に、私は覚悟を決めなくてはならなかった。 素直に罪を認め警察に自首するか、何らかの隠蔽工作を働き罪から逃れるか、それとも――第三の選択肢、私の掌中にあるこの遠い未来の遺産を使うか。 遺産……私の掌の上を転がるそれは、白く艶やかに、…

LOVE WILL RING

親愛なる蓉子嬢へ。 この手紙を君が手にしていると言うことは、私は既にこの世にはいないということだ。 なんて、ありきたりな言葉で切り出してみたがどうだろうか、驚いているかね? 実を言うと、他の誰でもない私自身、驚いている。絶えず人とは違うことを…

AKITUKI MAKOTO

皓い部屋。円柱の底辺。完璧なる円周率。精緻な建築。硬質的な壁。高い天井。大理石の模様。隙間のない空間。密室。詰まる息。居心地の悪い設計。穢れている空気。見かけだけの美的感覚。非人間的な計算式。座り心地の良さそうな椅子。独りきりの女性。黒い…

PERIOD

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

CAMOUFLAGE

極薄のマイクロチップが埋め込まれた産業廃棄物の前に立った清掃員は、その規格を調べようと屈みこんで、手首に嵌めているリーダをマイクロチップに近づけた。瞬間的に読み込まれたデータが、清掃員の体内を走っている有線に乗り、その頭脳にあるデータを伝…

BANKRUPT

銀行に命を預くと、交通事故や地震などの突発的な事態に巻き込まれたとき、抵抗力が減じているため死にやすくなる。しかし、トラブルにさえ巻き込まれなければ利子の分だけ長生きすることができる。それに命を高額で買い取ってくれる好事家も、裏の世界には…

KATANA

カチリカチリカチリ、歯車が刻む、時を刻む。喰い違う切れ込みが螺旋を磨き、滲み寄せる空間に音が弾き、カチリと音を立てる。右回転と左回転、反時計回りの歯車が連動し、螺子を逸らし針を跳ね、カチリカチカチカチリカチと時を刻む。 殺伐屋はしばらく懐中…

BOOBY TRAP

どんよりとした雲に白い息を吐き出して。 それから思い出したように血塗れのナイフを、雪の中に投げ捨てた。――が、すぐに拾いあげて、ポケットから取り出したハンカチで握りの部分をたんねんに拭いた。 目の前に倒れている半裸の女性に見覚えはない。と言っ…

CARNIVAL

「祭りは準備している間が楽しいなんて誰が言った! 祭りの間が一番楽しいに決まってるじゃねえか! なあ、お前らもそう思うだろう!!」 片手を振りあげ、体育館の壇上の剣華極上衛門は大声を張りあげた。 彼の叫びに呼応するかのごとく会場から悲鳴、絶叫…

A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM

マッチを擦る。 ――シュッという一瞬の空耳にも似た擦過音と共に、煙草の先端に火が灯る。 ゆっくりと息を吸いこみ、最初の一息がフィルタを通って、咥内から食道を伝い、肺に至る。白い煙が肺を満たしていく間に、右手を軽く振るう。ただそれだけの動きでマ…

MEGALOMANIA

そこに、大地に穿たれた楔があった。 それは巨大な岩の塊で、表面には無数の殴打の痕が残っていた。その岩に残された拳のひとつひとつが、名のある格闘家たちの軌跡で、また彼らの求道、究極、幻想。 その岩は確かに頑丈だ。しかし、打撃に打撃を積めば、や…

UNDER THE CELESTIAL AIR

――日々の平穏を怨んでいたからだろうか、こんな身に覚えのない竹箆返しを喰らったのは。私はただ、皆を驚かせようと思って、ちょっとした悪戯を仕組んだだけなのに……それが、どうして、こんな、こんなことになるなんて。 彼女は魔女狩りにあっていた。 炎の…

EMPTY DREAM

いずれは朽ち果てるだろう。 舞い降りる木の葉が風に吹かれて地に還るように。 やがては散り果てるだろう。 何もかもが元通りになるわけではない。 この世が誰かの見る夢だとして。 誰かが目覚めたとして。 また眠ったとして。 再生と破壊のすべてが繰り返さ…

BLUE BLUE CELESTIAL DOOR

その扉は二年ほど前に見つけた。 それはまだ、私が後片付けをするのが不得意だったころ。私は昼間に遊んだ人形やご本を、元の場所に戻すということをしなくて、私の部屋はたいへん雑然としていた。ある朝、私が目覚めるとベッドの周りは、きれいになっていた…

COGITO, ERGO SUM

目を醒ました女は、何処かに立っていた。 それが何処かは判らない。ただ、何処かは判る。いや、そうではなく。 つまり。それが具体的な何処かは判らないが、少なくとも何処かであることは、頭で判っていた。 もっとも、だからなんなのだろうか。 自分が何処…

SCREAMER 2

「お、れ、が」 …………。 「最強だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ…………はあはあ…………ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁああああああああああぁぁ…

SCREAMER

「いーち、にー、さーん」 …………。 「だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…